【感想】Webプロジェクトを成功に導く戦略的SEO思考 鈴木良治

Webプロジェクトを成功に導く戦略的SEO思考

先日、2018年6月30日初版の「Webプロジェクトを成功に導く戦略的SEO思考(Webサイトを正しく設計・ディレクションするためのSEO対策入門)」を読み終わりました。本書は、いわゆるSEO対策書や解説書ではなく、SEOに対する考え方や姿勢を説いたものです。本文にも、

本書は、実際にSEO対策の作業をしない人に役立つように、SEO対策のあるべき姿と実行する際に気を付けるべきポイントを示す書籍として、できるだけ専門的な内容を減らし、概念的に理解しやすい内容で構成しています。

27p

ということなので、読むシーンとしては、「この本を片手にPCの前に座り自身が関わるサイトにSEO対策を実施する」というよりも、「仕事終わりや休日に、ソファーに座ってSEO関連の読み物の1つとして気楽に読む」という方が向いている本です。

この本の著者の鈴木良治(すずき りょうじ)氏は、過去にも下記のSEO関連の本を執筆されています。

  • 成果を出し続けるための 王道SEO対策 実践講座
  • SEO対策のための Webライティング実践講座

WebやSEOに関わる担当者ならば、本屋さんで一度は目にしたことがある本ではないでしょうか。

SEO業界では非常に有名な方です。

そんな、Web業界で著名な鈴木良治氏ですが、Webと関わり始めたきっかけは、ひと昔前のWeb業界やSEO業界への危機感があったようです。

ひと昔前、まだまだ成長期だったWeb業界においては、Web知識のない顧客を(騙すとまでは言わないものの)最優先にしないサービスが横行しており、そのことを憂い状況を変えるために、本腰を入れてWeb業界に飛び込むことになったとのことです。

ゆえに(外部リンクを貼るなどの)怪しいSEOサービス提供者を戒める一方で、利用者にもWeb知識やリテラシーのレベルアップを促しています。

戦略的SEO思考の目次

さて、ここからはこの本の感想を述べたいと思います。

この本の目次は次の通りです。

目次

    1. PART1 Web業界の直面する問題 危機的状況にあるWeb業界
    2. 1.Webサイト関連サービスの現状 …… 012
    3. 2.利用者も学ばなければならない …… 021
    4. 3.本書の方針 …… 026
    5. コラム 危機的状況にある実務と方法論の乖離 …… 032
    1. PART2 SEO対策の基礎知識 SEO対策の過去・現在・未来
    2. 4.SEO対策についての基礎 …… 038
    3. 5.SEO業界の成り立ちと外部リンクの隆盛 …… 047
    4. 6.激動という混乱の中にあるSEO業界 …… 054
    5. 7.SEO対策サービスの現状 …… 062
    6. 8.中小規模サイトにおけるSEO対策 …… 069
    1. PART3 戦略的フレームワーク あなたのWebサイトに戦略はあるか?
    2. 9.正しい方針をとれているか? …… 076
    3. コラム 「効果」と「成果」の違い …… 079
    4. 10.ゴールを間違っていないか? …… 080
    5. 11.成果につながる集客になっているか? …… 084
    6. 12.成果にたどり着く道は見えるか? …… 088
    7. 13.その成果を出し続けられるか? …… 091
    1. PART4 戦略的SEO対策Ⅰ 正しい方針をとれているか?
    2. 14.「正しい方針」とは何か? …… 096
    3. コラム 外部リンクとどう付き合うか? …… 102
    4. 15.「正しい手法」とは何か? …… 107
    5. コラム オリジナリティとは? …… 115
    6. 16.近視眼的対策になっていないか? …… 120
    7. 17.どの検索エンジンに対策するか? …… 126
    1. PART5 戦略的SEO対策Ⅱ ゴールを間違っていないか?
    2. 18.ゴールを見誤ってはならない …… 134
    3. 19.本当にそのキーワードで良いのか …… 139
    4. コラム 「最新」の裏に潜むもの …… 149
    5. 20.そのキーワードは正しいのか? …… 160
    6. 21.ターゲットはイメージできているか? …… 167
    7. 22.そのキーワードはアクションにつながるか? …… 172
    8. 23.事例紹介:キーワード選定の誤り …… 177
    1. PART6 戦略的SEO対策Ⅲ 成果につながる集客になっているか?
    2. 24.いつ何を見せるか …… 188
    3. 25.その入り口が最適なのか? …… 192
    4. 26.事例紹介:入り口ページの誤り …… 198
    5. 27.魅力を伝えられるか …… 203
    6. 28.事例紹介:導線設計の誤り …… 207
    7. コラム 外部サービスとWebサイトの位置づけ …… 214
    1. PART7 戦略的SEO対策Ⅳ 成果にたどり着く道は見えているか?
    2. 29.絵に描いたモチになっていないか? …… 218
    3. 30.コストに耐えられる戦略になっているか …… 224
    4. 31.実現可能な戦略になっているか …… 231
    5. 32.正しいコーディングをしていけるのか …… 237
    1. PART8 戦略的SEO対策Ⅴ その成果を出し続けられるか?
    2. 33.成果を出し続けてこその成功 …… 246
    3. 34.長く運営していける戦略になっているか …… 252
    4. コラム 修正や更新の作業負荷を下げるには? …… 257
    5. 35.長く使えるWebを作成できているか …… 263
    6. コラム スマートフォンなどへの対応 …… 269
    1. あとがき …… 276

戦略的SEO思考とは?

初めに、著者は、「大企業向けのSEO対策と、中小企業向けのSEO対策は異なる」と定義付けます。

なぜなら、大企業ではほんの少しのSEO効果があれば、それがたった数%であっても、何百万円や何千万円という利益になって返って来るけれども、中小企業では、まず担い手が少なく、場合によっては一人で行わなければならないこと。

そして、予算が少ないこと。月数十万円の費用がかかるものなら、遠ざけられることも多いでしょう。しかし予算がなければ、巷で効果があるといわれるようなSEO対策も実践できないことが多い。

また、知識不足の問題もあります。

Web担当者が少ない中小企業では、SEO知識の蓄積がされず、低いレベルのSEO知識で運用せざるを得ないことがあること。

これらの問題から、大企業では可能なことでも、中小企業では実質的に不可能ということもよくあることです。

結局、大企業にはできて中小企業にはできない施策というのが必然的に出てくる訳ですが、それは事実として認めざるを得ない部分がありつつ、一方ではそうも言ってられない。

限られた制約の中でも成果が求められる訳です。

企業規模の大小の違いはありますが、それぞれの立場において、できることをできる範囲でやることについては妥協すべきではなく、人的リソース、予算規模に応じて最善を尽すことが求められます。

サイト改善事例の紹介

177pには事例の紹介もあります。

過去鈴木氏の元に、ウィルス対策ソフトなどの開発や販売をする会社から売上アップの依頼があり、様々な分析からサイトの課題をピックアップして 具体的にどのように改善案につなげていくか。

キーワード選定においても、非効率的なキーワードを除いた有効なキーワードを模索しながら、先方に何をどのように実際に提案したか、経緯まで詳しく書かれています。この事例の結論としては、現在のキーワード選定は誤っており、キーワード選定を正しく行うことで、大きな成果が挙げられるチャンスがあると考えられます。

198pの事例紹介は、入口となるページ設定が誤っているのではないかという考察から始まります。

先方は有名な出前宅配サービスを提供している会社で、宅配のポータルサイトを運営しています。

著者による分析は、検索ニーズや意図から、運営サイトの該当ページに何が求められているのか、検索結果画面からタイトルをクリックされたとき、より関連性の強いページが表示されているかどうか、ページは資産的な活用ができる状態になっているかどうかなどに及びます。

分析の結果、この事例でもサイト改善の必要性が高く、具体的に何をどのように着手すれば良いのかが書かれています。

これらから、サイトの規模を問わず、どんなサイトでも改善の余地はたくさんあることが分かります。

まとめ

終盤にかけては基本的な内容も含まれるものの、全体としては初級~中級者向けのSEO対策をカバーすることができる印象です。

しかし冒頭から記述しているように、この本の意義は、あくまで下記にあるように

本書は、SEO対策に関係するものの、コンテンツ制作やシステム開発などの作業を行わない人々を対象に執筆しています。

と、「作業を行わない人々」です。

SEOのために具体的にHTMLがどうだとか、外部リンクをどうこうすればよいとかではなく、SEOに対する考え方、捉え方、もしくは過剰な期待をしないことを含めて、まさしく「思考法」なのだと思いました。

近年SEO対策本は数あれど、このような思考法に着目して出版された本は稀でしょう。

その意味でも貴重な本だと思います。

ぜひご一読されることをおすすめします。

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